任意売却事業再生ブログ:従業員50人未満の社長さんのための事業再生バイブル
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再生事例 第3話 社内ルールの見直し
資金繰りが逼迫して倒産・・・粉飾決済発覚・・・など、倒産した会社がよく報道に出てくるキーワードが頭にちらついてい
た。
まだ、復活までの道は遠いものの、目先の資金ショートを何とか回避し、倒産の危機は脱した。
しかし、ほっと一息ついている暇はない。この危機的状況に至るまでの事業の運営は今も継続しているのだ。
社長と経営陣の役員そして私達コンサルタントは、その原因追究に本格的に取り掛かった。事業デューデリの結果と、資
産デューデリの結果、そして経営改善計画で作成した事業目標数値の確認と、その数値を達成するためにやらなければ
いけない事の確認。我々コンサルタントを含む役員会を行っていくと、矛盾と問題が浮き彫りになりつつあった。
私達は事業実績を更に遡り、事業内容の変遷と合わせて会社の歴史を掘り下げて調査して行く必要があるという結論に至った。5
年遡って資金の流れや、実績の確認をしてみると、問題が明確になってきた。
資金に本業以外に流れている金の流れがある・・・
社長もあまり把握していない資金の流れ・・・億を超える資金が会社から流失している・・・その資金は投資に向かってい
た。
そしてその資金は巧妙に損失分がBSの中に資産として残っているものとして紛れ込んでいた。
この状況を突きとめた経営陣は、経理担当を呼び出し、追求した。当然の対応と言える。
担当者は、業績も上向いていたし、会社の為にも資金を増やそうと財務戦略的に行っていたもので・・・・
決して会社を騙していたわけではない・・・良かれと思って行った事・・・借入金額も業績に対しては適正な範囲でしか借入し
てないです・・・どこでもやっている事ですし、銀行もそのことで問題企業としては指摘しないでしょう。借金の総額だってBS
上問題ある比率ではないはず。と言い放った。
そして、体調を理由に翌日、急遽退職届を出し退職してしまった。
その担当が、経理をほぼ一人で取り仕切っていたため現場は一時固まってしまったが、優秀な経理の社員達が私達コン
サルタントと一緒に業務に支障が出ないように新たな業務フローを築きあげ、業務に支障を来すことは最小限に留められ
た。
ここで、BS上の問題は、早期に解決できる問題ではないとした経営陣と私達は、本業の資金の流れを改めて見返した。
売上は優秀な営業マンと顧客に恵まれていたため大幅な増減はなく、安定的に目標額に達せられていた。そしてコスト削
減の見直しへ。本業での利益は現体制でも黒字である。
いや、何かおかしい・・・
一般的には経費や、固定コストの見直しや人件費の見直しに至るまでを徹底的に行うところだが、それ以前の問題が見え
る・・・支払手数料と交際費を合わせると尋常ではないくらい支払われている。
決算報告では、交際費も法定上の800万円以内だった、しかし、原価にも似た意味合いの経費、支払手数料がある。それ
も年間数千万円が計上されている。
なんだこれは・・・
過剰な、あまりにも過剰な接待交際費がそこにあったのだ、多い月で800万円、月で800万円、平均400万円の接待交
際費。この中堅規模の会社でそんな接待交際費が使える訳がない、そんな事をしていては、会社の資金などあっという間
に枯渇してしまう。
会計上の数値、キャッシュフローと、実際の現預金の管理と、キャッシュフローは一致しない。
数字の恐ろしさは、その数値をどう使い、示すかで、時には180度ものの見方をかえてしまう。
例えば、会計上の損益計算書で当期純利益が現金として会社にあるわけではないのである。
この辺が理解できない経営者が未だに多いことと、この辺を熟知したうえで操作しようとする経理・財務担当者がいる。共
に大きな問題を起こす原因である。と私達は長年の経験から思っていることだ。
まずは、この接待交際費を止めなくては・・・・
営業マン達は、この自由に使える接待交際費が、中堅のブランド力の少ない会社が、売上を上げるための武器であり、絶
対不可欠であるという認識があるようだ。
だが、それは妄想である。
会社と会社(BtoB)の取引において、取引上のメリットがなければ、どんなに、一担当者が良い思いをさせてもらっても、相
手の利益を必要以上に上乗せして会社に不利益な取引をすることなど、今の世の中ではない。バブル期ならともかく、消
費がまだまだ停滞していて、世界中が不安定なマーケットにあるなかではシビアな財務の健全化を、まともな会社であれば
目指しているはずだ。
そして、経営陣は即座に接待交際費のルールを周知徹底させる事にした。
ルールにそぐわない経費は出さない事を会社として取り決めたのだ。
営業マン達は、そうやすやすといままでの営業スタイルを変える訳にも行かない。必死に抵抗して、時には怒鳴り声を上げ
て経理に領収書を基に支払いを求めた。だが、経営陣と経理部は、決して折れる事をしなかった。
営業に営業のスタイルを変えさせる必要があるとしたのだ。
しかし、営業マン達は、取引担当者にいきなり対応を変える訳にはいかない。
当初、自腹を切りながらも、営業スタイルを変えなかった。しかし、自腹を切って今までのやり方を通し続ける事は出来ず、
スタイルを変えて行き、徐々に接待交際費は実態と共に少なくなりつつあった。
一方で営業マン達の会社への信頼は低下し、逆恨みを持つ者さえあらわれた。しかし、売上は落ちなかった。
取引先の担当者は接待交際費で良い思いをしなくても、BtoBでは必要があるから取引を継続する。異常だった接待交際
費は常識の範囲にされ、会社としては利益率が倍以上上がっていった。
会社の会計上の数値はV字型の再生が達成出来ている。
だが、私達コンサルタントの仕事は、そこで終わり。という訳にはいかない。再生は、数字だけの再生ではないのだ。新たな
問題が出てくる、社内に対する引締めは、業績好転時に、その反動を生むのである。 次回、第4話 社内の反発
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代表の野呂のインタビューがコンサルBankさんのサイトへ掲載されました。
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